マンションの修繕積立金を組合が運用するリスクとは。失敗しないための判断軸

基礎知識


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マンション管理組合の理事会に入ると、

驚くほど静かなテーマほど、実は重いことに気づく。

修繕積立金の運用。

これもそのひとつだ。

総会の議題にふと載り、

管理会社がサラッと説明して、

理事の中に一人や二人は

運用して少しでも増えたら楽ですよね

と言う。

その空気感が、私はいちばんこわい。

運用という言葉には、

魔法っぽさがある。

効率が良く見える。

増える未来を想像してしまう。

でも実際のところ、

組合が修繕積立金を運用するのは

その魔法とは真逆の領域で、

慎重以上に慎重でないといけない。

ここでは、

組合が修繕積立金を運用する時に潜むリスクと、

失敗を避けるための判断軸を、

静かに、少し体感ベースで整理していく。

組合運用のリスク1:損失を出した時、責任の所在が曖昧になる

まず、最大のリスク。

損失が出た時、

誰が責任を取るのかが曖昧。

理事長?

理事会?

管理会社?

総会で承認した住民全員?

どれも正しくて、どれも違う。

修繕積立金は、

住民全員の未来のお金だ。

それを運用して失敗すれば、

住民全員に影響が出る。

でも、責任の所在は法律上も完全に明確ではない。

だからこそ、

責任問題がもっとも住民トラブルを引き起こしやすい。

決めていたようで決めていなかった

というパターンが、一番多い。

ここを明文化しないまま運用に踏み切るのは、

ほぼ地雷原を歩くようなもの。

組合運用のリスク2:住民の理解度がバラバラ

管理組合は、投資クラブではない。

    ・投資に詳しい人
    ・金融が苦手な人
    ・高齢者
    ・忙しくて議案を読まない人
    ・興味ゼロな人

バラバラだ。

そこに

運用

という議題が入るだけで、

情報の非対称性が発生する。

一部の理事が詳しく、

大多数の住民は理解していないまま賛成する。

もしくは反対する。

この構造そのものがすでにリスクだ。

理解度を揃えないまま進むと、

後で必ず揉める。

理事と住民が対立し、

管理会社が中立を装いながら距離を置く。

最悪、訴訟にまで発展した例もある。

組合運用のリスク3:運用によって値上げ問題が先送りされる

これが、もっとも危険な落とし穴だと思う。

運用すれば増える

という幻想が出ると、

住民の心理に

値上げしなくてもいいのかも

という錯覚が生まれる。

でも事実は逆。

修繕コストは年々上がる。

資材は高騰。

人件費は上昇。

建物は老朽化。

運用で得られる利益は

年間0.1〜0.5%程度に落ち着くことが多く、

値上げのスピードを止めるほど強くない。

むしろ、

運用という言葉が

判断の先送りを生み、

後で大規模な値上げが必要になるマンションもある。

気づいた時には遅い。

住民の不信感だけが積み上がり、

組合の空気が重くなる。

組合運用のリスク4:管理会社の提案が中立とは限らない

管理会社が運用を推してくるケースがある。

もちろん、善意のこともある。

でも、管理会社には管理会社の事情があり、

運用というテーマは

業績や関係会社との連携に影響することもある。

情報の量も立場の強さも

管理会社のほうが圧倒的に優位。

組合が知らないまま

管理会社の空気で進むと、

住民から

なんであの時相談してくれなかったの?

と責められる。

中立に見えるが、

必ずしも中立とは限らない。

私はここもリスクとして軽視できないと感じている。

組合運用のリスク5:総会承認が形骸化しやすい

総会の承認があるから大丈夫。

そう思う理事は多いが、実際は違う。

総会は、

全員が議案書を読み込み、

意図を理解したうえで

判断しているわけではない。

委任状の比率も高い。

議案は複雑。

説明は淡々としている。

形式上は承認でも、

実際には同意とは言えない。

後から

聞いてなかった

説明不足

と言われるのは、
この構造が原因だ。

総会承認を盾に進めると

後で組合が割れる。

組合運用のリスク6:運用はほんの少しプラスでしかない

これは残酷な現実だけれど、

運用できる商品は

安全性が高すぎるものに限定されるため、

リターンは非常に小さい。

定期預金:0.1%

国債:0.2〜0.5%

この世界では、

数年かけて数十万円増えるかどうか

という程度だ。

数億円の積立金がある巨大マンションなら

多少の意味はある。

けれど、

一般的なマンションでは

劇的な効果は生まれない。

つまり

頑張っても少しプラス

頑張らなくても少しプラス

増える額より、

手間とリスクのほうが大きい場合もある。

じゃあ組合はどう判断すればいいのか。判断軸を4つに整理する

ここが今回の核心。

運用するかどうかではなく、

どう判断するかが最重要。

私は、その判断軸を4つにまとめている。

判断軸1:目的は明確か

    ・値上げの回避?
    ・ただの金利対策?
    ・資産の安全性の向上?
    ・住民への安心材料?

目的が曖昧な運用は100%失敗する。

判断軸2:ガイドラインを守っているか

    ・国交省の範囲内か
    ・株や投信は論外
    ・債券も安全性の高いものだけ

逸脱した瞬間、全責任は理事会にのしかかる。

判断軸3:住民の理解が揃っているか

理解度の差が大きいほど、

運用はトラブルに直結する。

資料の作り方

説明のしかた

根拠の提示

リスクの明示

全部が必要だ。

判断軸4:運用をしない選択を比較したか

運用しない場合の未来。

運用した場合の未来。

この2つを必ず並べる。

運用一択で進めると、

判断が歪む。

組合が運用するより、自分の家計を運用したほうが安定する理由

組合の運用は、

ほんの数%を取りにいく戦いだ。

でも、自分の人生の運用は、

もっと自由がある。

たとえばS&P500。

長期で見れば

年7〜10%の成長をしてきた時代が多い。

修繕積立金はきっと上がる。

組合の運用は、小さくしか増えない。

ならば、

自分の家計の側で

資産をゆっくり育てておくほうが

未来の安心は確実に大きい。

私はそれに気づいてから

NISA

をひとつの避難場所のように置いている。

修繕積立金は組合が守る。

未来のお金は、自分で守る。

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おわりに

修繕積立金の組合運用は、

思っている以上に重いテーマだ。

リスクは決してゼロではない。

むしろ、誤解と期待と責任のズレが積み重なる

静かな危険が潜んでいる。

でも判断軸さえ揃えておけば、

余計なトラブルは防げる。

建物の寿命と、

自分の人生の寿命は、

別の線で動いていく。

組合は建物を守る。

あなたはあなたの未来を守る。

その両方が揃った時、

マンションも人生もゆっくり強くなっていく。


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